原 菜乃華×作間龍斗「影子と真昼は同じものを同じように見られる二人(原)」2026年秋号インタビュー
原 菜乃華さん、作間龍斗さんのお二人は、映画『ないものねだりの君に光の花束を』に主演されます。原作小説や脚本を読まれた時の印象を教えてください。
原 純粋にとても面白い作品でしたし、私はすごく好きになりました。私が演じた影子と作間さんが演じた真昼の関係性に、安易な言葉をつけたくないなと思わされたんです。中でもすごく好きなシーンとセリフがあって。真昼くんが影子に「好きな本は何?」と聞くのですが、影子はそれを言うことで、自分の中身を見透かされるような気がするから、なかなか言うのが難しい、みたいなことを返すんです。それに対して、真昼くんが一言「分かる」と。読んだ時に、同じものを同じように見られる二人なのだなと思いました。環境は違うけれど、話していてすごく楽しいだろうなと。そのシーンだけで、お互いに深め合える関係性なのだと思いました。恋愛でもないし、友情でもない。でも、こういう関係性があったら心の拠り所になるだろうなと、羨ましくもありました。自分が影子と似ていると感じる点も多かったので、感情移入しやすかったです。
作間 僕は小説をあまり読まないのですが、久しぶりに読んで、そんな僕でも没入できて、読みやすい作品だなと感じました。小説って、想像の余白がたくさんあると思うんです。そこがとても良くて、真昼にも共感できる部分が多くありました。読みながら、どう映像になるのかと想像が膨らみましたし、脚本を読んだらすごくきれいにまとまっていたので、真昼の微妙なニュアンスを僕がどう表現できるのかについては悩みました。正解をひとつに決めずに、まずはやってみようと思い、自分の中で真昼のイメージを作っていきました。台詞にも、真昼の性格が節々に出ているように感じ「こういうことがあったから、こういう言葉遣いになっているんだろうな」、「この感情の機微は、あそこからきているんだろうな」など、点と点を結ぶような作業をしていた気がします。抱えている暗い部分があるからこそ輝けるところもあると思うので、そのコントラストは現場に入ってから、安藤(尋)監督とも話しながら作っていきました。
ちなみにお二人は過去数回共演されていますよね。
作間 しっかりコミュニケーションが取れる形での共演は今回がようやくだったのですが、インするタイミングからどこか安心感はありました。最初はドラマ作品での共演だったのですが、あまり一緒になることはなく。ただ、作品のプロデューサーが原さんをすごく推していて「本当にすごいからみんな頑張ってね!」と言っていたんです。当時は僕もまだ高校生で、この世界のこともよく分かっていなかったのですが、お芝居を見て「こういうことか!」と驚いたのを覚えています。自分も頑張らなきゃいけないと思いました。
原 嬉しいです……。私は作間さんに初めてお会いした時は、クールで落ち着いている方なのかなと、ずっと思っていました。一つ上とは思えない落ち着きを放っているなと。その印象は今でも変わらず、すごく視野が広い方です。ご本人は否定されていましたが、私はコミュニケーション能力が高いなと感じています。バランスを見て、誰も置いていかれないように話してくださるんです。スタッフの皆さんとも隔てなくフラットにお話ししていて、その輪にポンと入れてもらえたような感覚がありました。
映画に話を戻すと……作間さんと真昼は“アイドル”という共通点がありますね。
作間 真昼には高校生という面もありますが、“アイドル”をしている点は同じです。ただ、仕事に対するモチベーションのあり方は別物です。何のために光を放っているかというところも、真昼には明確なものがあって。僕は第一に幸せに暮らせればいいなと思っているので(笑)、彼のような切実さとは違います。だからこそ、尊敬する部分も見つけられました。周りのアイドルの方にも、バックグラウンドを抱えて活動されている方がいるかもしれないですし、これまではファンの方に対して視線を向ける時間が長かったんですが、その見方も大事にしていきたいという感覚は新たに芽生えました。真昼に与えることはできないですが、与えてもらうことはたくさんありました。
原さんは、影子と似ている部分も感じましたか?
原 私自身、学生時代は影子と同じような考え方をしていたという感覚はありました。自分の中では、ひねくれているというか、卑屈でちょっとネガティブなところは似ているのかなと思います。まず壁を作ってしまいがちなところも、特に学生時代は強くありました。だからこそ、影子が言葉を選びすぎてしまう感じや、踏み込みたいのに踏み込めない感じも分かる部分が多かったです。
原さんは、ご自身も言葉を大事にされている印象があります。影子のワードセンスにも響くものがあったのではないでしょうか。
原 影子のワードセンス、好きでした。影子は、言葉にちゃんと責任を持っている子だと思うんです。小説が好きだから、言葉の持つ力や重さも分かっている。だからこそ、何かを押し殺したり、一度作った言葉をこねくり回して違うものに変形させてから出したりする。 そういう思慮深いところが好きでした。面倒くさい性格だろうなとは思いましたが(笑)。彼女には彼女なりの優しさがあって、哲学や美学がある。そこにすごく惹かれましたね。
二人は関わり合う中で、自分でも気付いていなかったことに気付いていきました。役として、お互いとの対話の中でどんなことに気付いていったと思いますか?
原 影子は、一見すると自分のことばかり考えているようにも見えますが、実は与える側の人間なのだと思いました。真昼くんへの声のかけ方が、たっぷり愛情をかけて育ててもらった人の声のかけ方なんです。お父さんやお母さんに同じように声をかけてもらってきたから、真昼くんにもそういうふうに声をかけられるんだろうなと、母性のようなものも感じました。二人には距離感があって、真昼くんも一線を引いている人だし、影子自身も入ってきてほしくないラインがちゃんとある人です。だから、そこに踏み込むのは失礼だよねと思える子で。でも、「この人のためなら飛び越えたい」と思ったんだと思います。たとえ迷惑だったとしても、動かなきゃいけない。その行動を取れたことに、私はすごく感動しました。私にはできないことだなとも思いましたし、そう思える人に出会えた影子は幸せだなと。かっこいいなと思いました。
作間 二人の関係は、言語化が難しいですよね。言語化が難しいからこそ、芝居を重ねていく中で理解を深めた部分はありました。真昼に関しては、自分の本心がバレたかもしれないというシーンがあるのですが、ああいう風にちょっと自虐っぽくしているときほど、「この人は限界なんだろうな」と感じました。明るく振る舞うことで、自分本来の姿とかけ離れたところへ行こうとしている。そのためにすごくエネルギーを使っているんだと思います。その分、影子といるときは、そのままの自分でいられるからすごく楽だろうなと感じました。僕自身、明るい真昼を演じているときは、やりづらさもあったんです。作間そのものの人間性が関係している可能性もありますが(笑)。真昼という人間を知ったうえで演じていると、やっぱりやりづらい。人ってやっぱり、誰かの助けがないとどうしようもない部分ってあると思うんです。そういう存在が必要なタイミングでそばにいてくれてよかったなと、演じながらも感じていました。
真昼にとっては、影子に救われたことがある種生きる糧になっていくような。
作間 そうですね、彼は一人でずっと走ってきた人なので。夢を与える仕事をしているけれど、どこかで自分も夢をもらわないと発信できない。真昼にとって、影子はそういう存在になったんだろうなと感じます。作品のビジュアルも、一枚の写真としてすごくよくできているなと思うんです。影子の差し伸べる手があるけれど、真昼がその手に触れることはないんですよね。そこがすごくいいなと思っていて。距離があっても、お互いに向いている方向性が合っていれば、それだけで力になる。それがすごく素敵だなと思います。
原 私も二人の関係性はそこがいいと思いました。影子が真昼くんを救っているように見えますが、真昼くんも影子をすごく支えているんです。影子が卑屈なことを言った時も否定するわけではなく、絶妙な距離感でサポートを入れてくれる。同じ感性を持っている人にしかできないやり方だなと思いました。「お前の言葉で救われる人がいると思うよ」という言葉も、真昼くんの軽やかさでさらっと言ってくれたから、ひねくれた影子にもすっと入ってきたんだと思います。影子は信用している人の言葉じゃないと響かない。だから、真昼くんという存在や言葉によって、彼女も成長できたのだと思います。
二人は、今後の人生でお互いの存在を心の拠り所にして生きていくでしょうが、なかなか人生でそういう人と出会えることはないと思います。ご自身にとって、今の自分を構成しているものというと?
原 それこそ影子と同じくらいの中学生、高校生の頃、オーディションに行ってもまるで受からなくて、実写の作品が観られなくなってしまった時期があったんです。見たくないのに勉強しなきゃという気持ちもある中、自分がそちら側に行けない事実がすごく悲しくて。その時にハマったのがアニメでした。あの時期は、アニメしか観られなくて。そのおかげで今、アニメに携わるお仕事もさせていただいて、すべてが繋がっているのかなと思うんです。私は、ネガティブな気持ちの方がよく燃える原動力になると思っています。だから、あの時感じた悔しさはずっと持っていなきゃいけないなと感じるんですよね。
作間 すごいな……。僕は、事務所に入るきっかけになったのが母親だったので、その存在が大きいです。ダンスを習っていて、「記念に行ってみたら?」というラフな感じでオーディションに行ったら、とんでもなく怖い世界に足を踏み入れることになりました(笑)。冗談です(笑)。最初は「自分が何でこんなところに?」と思っていましたが、今振り返ってみると、この業界にいなければ何をしているかも想像がつかないですし、すごく感謝しています。自分の性格からすると得意なジャンルの仕事ではないかもしれない。でも、だからこそできていることもたくさんあると思うんです。そういうきっかけをくれたからこそ、今ここにいられるんだなと感じます。
俳優 原 菜乃華(NANOKA HARA)
Instagram:@nanoka_hara_official
俳優 作間龍斗(RYUTO SAKUMA)

『ないものねだりの君に光の花束を』
監督:安藤 尋
原作:汐見夏衛『ないものねだりの君に光の花束を』(角川文庫/KADOKAWA刊)
出演:原 菜乃華、作間龍斗(ACEes)、他
11月20日より公開
©2026『ないものねだりの君に光の花束を』製作委員会
costume
(SAKUMA)
blouson ¥50,600 by CULLNI / CULLNI FLAGSHIP STORE、pants¥22,000 by NATAL DESIGN / SCATTER BRAIN、others stylist’s own
(HARA)
tops ¥19,800 by ILANIS、dress ¥18,700 by sahara、ear cuff ¥18,700 , ¥16,500, pearl ring ¥60,500 , silver ring ¥31,900 all by e.m. / e.m. AOYAMA STORE
staff
Photographer : KOTOKA IZUMI
Hair & Makeup : ASAKO BABA(HARA) , YOUSUKE ASAZU(SAKUMA)
Stylist : ARISA YAMADA(HARA) , TOMOMI SUGINAGA(SAKUMA)
Director : SATORU SUZUKI
Edit & Text : AYAKO UENO