桜田ひより「作品を通して、改めて人のぬくもりを感じていただけたら」WEBインタビュー
本作で桜田さんが演じたさやかは、どのような女性として映りましたか?
感受性が豊かな子だと思いました。人の感情に敏感で、言葉だけではなく、その人が放つ空気感や場の雰囲気にも、ある種、飲まれやすい子で。内にこもりやすいところもありますが、だからこそ人の気持ちに寄り添うことができるのだと感じました。そうした部分をお芝居でも見せたいと思い、演じる時は人の言葉をどう受け取り、何を考えているのかを大事にしていました。セリフが多い役ではないので、表面に出てくるものだけではなく、その先で彼女が拾ってしまう感情など、頭の中で言葉を深く考えることで、もう一段深いところで人の気持ちを捉えてみようと思っていました。
さやかにとって、過去に自分が“逃げてしまった”と思っている出来事は、ずっと囚われ続けているものだと思いました。抜け出せない過去のようなものがあり、それが重りになっている。だから人と接することに前向きになれなかったり、躊躇してしまったりするのだろうなと、台本を読みながら感じていました。
ただ、読んでいる段階では同じ言葉でも、それをどんな人が発するかによって受け取り方はかなり変わると思っていて。だからこそ、現場で生まれる感覚を大事にしていました。実際に相手のお芝居を受けると、それぞれが持つエネルギーの強さや柔らかさ、硬さが見えてくるんです。カットごとにみなさんも変わりますし、自分も変わっていく。そんなところも映像として残していただけたらいいなと思っていました。

最初にオファーを受けた時は、どのような心境でしたか?
本当にありがたいなという気持ちと、さやかという存在を救ってあげたいなという気持ちがありました。外的要因から引きこもるようになってしまい、自分をうまく出せない子が、どうしたら学ぶことの楽しさや、人と触れ合うことの楽しさを見つけられるのか。演じている時も、もちろん周りの方々の考えや話を受け取るのですが、それ以上にさやかと向き合う時間がすごく多かったです。この子を外の世界に連れ出してあげたい、という思いが、常に自分の片隅にありました。
原作や脚本を読んで、特に大切にしたいと思った部分はありましたか?
原作の小説を映画の尺に落とし込むと、削られてしまうものもあれば、膨らむところもあると思います。その中で、私が「ここは大切にしたい」と思ったことを中川(龍太郎)監督とお話しさせていただきました。特に、冒頭で過去のさやかが人とぶつかってしまい、いじめられてしまうシーンは大切にしたいと思っていました。抜け出せない過去は人それぞれにあると思いますが、さやかにとってあの出来事は、常に自分の片隅にあって、作品を通してずっとついてきてしまうものでもある。ふとした時に思い出してしまうような瞬間があってもいいのではないかと思いました。監督は私の持っているものをとても大切にしてくださる方で、現場で「こうした方がいいかな」、「ああした方がいいかな」と話すことはあっても、最終的な判断は私に委ねてくださいました。私が思うさやか像と、監督が思うさやか像を、作品を通して少しずつ擦り合わせていく作業が多かったように思います。
さやかが抱えている痛みや葛藤に寄り添う中で、ご自身も同じように葛藤を抱えることはありましたか?
現場では、年齢を問わずみなさんが楽しそうにお話しされている姿を見て、本当はとても混ざりたかったです。でも、さやかとしてそこにいると、一歩引いて見てしまうというか。人の話を聞くことが好きな子でもあるので、それぞれが話している表情を観察していました。みんなの輪に深く入り込まず、ある種、距離を置いて見ていた日々だったなと思います。混ざりたい思いをぐっとこらえて、みなさんが楽しそうに話している表情や会話を聞いている時間が多かったです。『星の教室』では、座長だからと意気込むというより、さやかと一対一で向き合うことが大切だと思っていました。作品によっては、座長として引っ張っていかなければいけないお仕事もあると思います。でも今回はそれを一旦置いて、人とちゃんと向き合うことや、その人の感性、感情、持っている空気感に、常に自分が敏感でいようと意識しながら撮影していました。

作品の舞台は“夜間中学”です。馴染みがない方も多い場所だと感じますが、その世界に触れてみて、どのようなことを感じましたか?
もともと夜間中学という存在は知っていましたが、どういう場所で、どういうことをしているのかは正直分かっていませんでした。撮影前に、実際に通われていた方の卒業文集や、インタビューの資料映像、紙の資料、時間割、登校時間など、いろいろな資料をいただきました。その中で「こういうことをしていたんだな」と知ることができました。生徒と先生の距離がとても近くて、年齢や国籍を問わず、教室に通っている方全員が仲間だという意識が強い場所だなという印象を受けました。
資料を読んでいて、特に印象に残ったことはありますか?
みなさんの学びへの姿勢が本当に前向きなんです。学べる環境が当たり前ではなかった方も多い中で、学ぶことに対するエネルギーの強さや、心の底から楽しいと思う気持ちが、文字や表情から伝わってきて。60代、70代、80代の方が通われていたり、10代の方が通われていたり、本当にいろいろな方がいました。まさに、この作品に描かれている教室そのものだと感じました。
実際の教室のシーンも、とても温かい空気がありました。撮影現場も和気あいあいとしていたのでしょうか。
和気あいあいとしていました。みなさん、本当にいろいろな会話をされていました。個々で話している時もあれば、みんなで一緒に話している時もあって。それぞれ自由に話していて、スタッフの方々に「そろそろやりますよ」と言われることもありました(笑)。山本 學さんがお芝居についてお話しされていたことが印象に残っています。あとは、補食のシーンも印象深かったです。みんなで机を向かい合わせにして食べる場面では、「学校ってこうだったよね」という話をしました(笑)。

原作は20年以上前の作品ですが、今読んでも心に響くものがあると感じました。桜田さんは、この作品のどのようなところに時代を超える魅力があると思いますか?
登場人物の年齢がバラバラであることは大きいと思います。その人の視点によって、考え方や経験してきたものは違います。だからこそ、いろいろな方に響く作品だと思います。この映画を観てくださる方も、特定の層だけではなく、本当に幅広い世代に届くのではないかなと思っています。
今の桜田さんは、この作品をどのように受け止めていますか?
本作では、戦争を経験された方のお話を、さやかが実際に生の声として聞く場面があります。私自身も中学生の時に、戦争を経験された方から直接お話を聞く機会がありました。そこは、さやかと重なる部分だと思いながら演じていました。さやか自身も、自分が経験したことのない出来事を、実際に経験した方から初めて聞く。その衝撃があると思いました。自分が映画やドラマで見ていたようなことを、本当に経験された方がいるという状況は、とても大きなものです。そうした部分にも、さやかの心が動く瞬間がいくつもあるのだと、演じていて感じました。撮影中もその時の記憶がよみがえりましたし、今ではなかなか聞くことのできないお話でもあるので、当時の自分が衝撃を受けた感覚を、さやかにも投影できたらいいなと思いました。

本作は角川春樹さんにとって最後の総監督作品でもあります。角川さんとのエピソードで印象に残っていることはありますか?
撮影に入る前に、角川さんに一度ご挨拶させていただきました。その時に、角川さんがこの作品にかける熱量や思いをダイレクトに伝えてくださって。私自身、その言葉を聞いてより一層、『星の教室』に対する思いが強くなりました。角川さんがこの作品を心から大切にされていることが伝わってきたので、その思いを、私だけでなくみなさんと一緒に、作品として形にできたらいいなと思っていました。
完成した作品をご覧になって、今どのような気持ちが残っていますか?
撮影中から感じていた人のぬくもりを、完成した作品を観て、より一層強く感じました。さやか自身の成長の物語でもありますし、観てくださる方にとって、少しでも勇気が湧いたり、「誰かと連絡を取りたいな」と思えたりするきっかけになれたら嬉しいです。この作品を通して、改めて人のぬくもりを感じていただけたなら、作品に携わった一人として、とても幸せに思います。

俳優 桜田ひより(HIYORI SAKURADA)
Instagram:@hiyori_sakurada_official

『星の教室』
総監督:角川春樹
監督:中川龍太郎
原作:髙田郁「星の教室」(角川春樹事務所刊)
出演:桜田ひより、仙道敦子、萩原聖人、小林虎之介、三戸なつめ、甲本雅裕、おいでやす小田、原田泰造、真木よう子、小泉孝太郎、中尾ミエ、浅野温子、山本學、他
11月6日より公開
©2026映画「星の教室」製作委員会
costume
Knit ¥24,200 , dress ¥26,400 all by DEICY
staff
Photographer : KAITO FUJISAWA
Hair & Makeup : MAI TOKUNAGA(BEAUTRIUM)
Stylist : RYOKO MAEDA
Edit & Text : AYAKO UENO(AKANE MAGAZINE)