ブランドのあゆみ 雪肌精〔せっきせい〕-1
品格あふれる美しいブルーボトルに、凛とした存在感を放つ象徴的な漢字ロゴ。誕生以来、長年にわたって多様な肌悩みに寄り添ってきた「薬用 雪肌精」は、時代や性別、国を超えて多くの人々に愛されている。地球の恵みを余すことなく丁寧に活かしながら、サステナブルな進化を重ね続けるロングセラーアイテムの、魅力と秘密を紐解いていく。
ブランドの始まり 1985-
新しい時代の幕開け
雪肌精は1985年5月16日に誕生した。コーセーの創業者である小林孝三郎の長男で二代目社長の禮次郎(れいじろう)が、社内会議において“誰もが必要とする、普遍的な価値を持った単品型化粧品を新たに発売する”と宣言し、プロジェクトチームが発足されたのが始まりだ。化粧品に効果・効能が求められる時代が必ずくるという強い信念のもと、新たな時代を切り開くべく、数種類のスキンケア製品が開発された。それぞれが特定の肌悩みにアプローチする単品完結型の化粧品である。とはいえ当時は、アイテムをライン使いすることを前提としてシステム設計されたブランディングが主流の時代。普段のスキンケアルーティンに目的別でプラスワンを取り入れることを打ち出すアイデアは、非常に斬新で、前衛的なものだった。

初期の広告。雪肌精の世界観を示すため、季節を問わず通年で使用できることをアピールする「春夏秋冬、雪の肌」というコピーが数年間にわたり採用された。
一連のプロジェクトで登場した高機能シリーズ。シワにアプローチする美容液「活肌精」、乾燥対策クリームの「潤肌精」、白髪にアプローチする「ヘアエッセンス」、くすみやごわつきが気になる肌のための洗顔料「パウダーウォッシュ」の4 品が、雪肌精よりも一足早く1984 年に発売された(現在は販売終了)。

開発コンセプトは「和漢処方」
雪肌精が発売された1980年頃は、地球温暖化をはじめとし、オゾン層の破壊や酸性雨など、世界中で環境問題が叫ばれた不安定な時代でもあった。そのため化粧品にも安心安全が求められ、ナチュラルコスメにも注目が集まり始めていた。そこで、効果をきちんと実感できる化粧品を開発しようと考え、当時まだ珍しかった和漢植物由来の成分にいち早く着目。東洋発想のもと継続的に使うことで健やかな肌を目指す、ナチュラルでありながら科学的に裏付けされた品質を徹底的に追求し続けた。そして100種類に近い和漢植物を集めて研究を重ねた末、ついに雪肌精最大のこだわりである“透明感レシピ”が完成した。雪肌精が白濁しているのは水分と油分が混ざっているためだが、配合量や混ぜる速度、回数などが少しでもズレると、色や質感がまったく別の物になってしまう。そのため、この課題を解決するための専用機器も同時に開発された。
「それほどまでに時間をかけて研究した理由は、“みずみずしく爽やか、でもしっとり感は残す”という雪肌精ならではの最高の使用感を妥協せず追求していたから。テストや官能評価を何度も何度も繰り返しました(雪肌精ブランドマネージャー 塩島瞳さん)」

美容にいいと古くから愛されてきたハトムギをはじめ、アミノ酸などを豊富に含むウリ科のメロスリアなど、100 種類以上の和漢植物から厳選した素材をブレンド。安心して使えるクオリティを目指し、原産地までこだわり抜かれている。
アイコニックなパッケージとブランド名の由来
雪肌精の象徴ともいえるのが、深く鮮やかな青地に漢字3文字のロゴが目を引くパッケージ。薬瓶をイメージして採用されたという瑠璃色は、“雪肌精ブルー”の愛称で親しまれている。瑠璃色のボトルから白濁した中身が微かに透けて見える、優美な佇まいが印象的だ。フォルムは薬瓶から着想を得た六角形で、女性の手にもフィットしやすい設計。「漢字をブランド名に使用するのはとても珍しいケースでしたが、現在では海外展開において、“日本らしさ=ジャパニーズビューティ”をアピールするための重要な要素を担っていると感じます(塩島さん)」
雪肌精は、当時の美容トレンドでもあった“白い肌”に焦点を絞って開発された製品。そこで当初は“白肌精”というブランド名が有力候補として挙がっていた。しかし発売直前に、“白”という漢字を使うと薬事法の関係で発売許可がおりないことが判明。急遽、代わりとなる名前を再検討することを余儀なくされた。この危機的状況を打破したのが、当時の社長の「白の代わりに、雪という字を使うのはどうだろうか」という一言だった。
「冬の情景を幻想的に彩る雪に、特別な想いを抱いている日本人は多いと思います。それに、雪の持つ澄み切った美しさは、きめ細やかな素肌にも通じるものがある。雪という字には、それだけの奥行きと可能性が秘められていたのです(塩島さん)」。
これをきっかけに、“雪肌精”という名前で再度申請したところ、無事販売許可がおりた。このような事情もあり、雪肌精だけ発売が1年ほど遅れることになる。しかし、女性が紫外線対策を意識しはじめる初夏に発売日がスライドしたことにより、結果としてより多くの関心を集めることに成功した。


格式の高い書体が採用されたという初代パッケージ。鮮やかな瑠璃色は、日本人の肌を最も美しく見せる色とも言われていた。また、当時の社長が創業の頃にヒット商品となった“スキンパール”の色が好きだったこともヒントに。デビューから3 年後の1988 年には、米誌「VOGUE」の日本特集にも掲載された。
透明感のパイオニア
内側から発光する雪のように、純度の高い肌を目指すための化粧水として開発された雪肌精。シミやそばかすのようなスポットの肌悩みではなく、肌全体の印象を左右する“くすみ”にアプローチするというコンセプトだ。そんな理想的な肌状態を端的に表したキーワードこそが、“透明感”である。雪肌精は透明感という概念がまだ一般的でなかった時代から、その正体を追求してきたパイオニアだ(1985年当時の手書きの商品企画書にも、すでに透明感という言葉が記されている)。
「透明感=肌の印象を表す言葉であり、水分量のように機器測定で数値を得られるものではありません。そこで私たちは、透明感という非常に抽象的な概念を科学的に解明し定義付けるべく、約30年以上にわたり研究を続けてきました(塩島さん)」。
次第に透明感に関わる因子が明らかになり、2019年にはついに透明感方程式を確立した。

Text & Edit: Shiho Tokizawa