石橋静河「人が何者かになる瞬間に、自分が立ち会えている感覚がある」WEBインタビュー

INTERVIEW

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石橋静河「人が何者かになる瞬間に、自分が立ち会えている感覚がある」WEBインタビュー

放送中の連続テレビ小説『ブラッサム』で葉野 珠を演じられています。石橋さんから見て、珠はどのような人物でしょうか?

珠は、すごく好奇心旺盛な人です。何かを「してみたい」と思うと、次の瞬間にはもう行動に移しているような人。とても行動力がありますよね。今も女性が完全に自由に、生き生きと生きられる時代かと言われると、まだそうではない部分もあると思うのですが、さらに100年前、女性がさまざまな役割を押しつけられていたり、今よりずっと自由がなかった時代に、珠は自分らしく生きようと行動していた。そういうところに、私はとても勇気をもらっています。

演じるにあたり、準備されたことはありましたか?

撮影が始まる前に、友人と(『ブラッサム』の舞台である)岩国に行きました。観光をしながら、宇野千代さんが日常を過ごされていた場所にもお邪魔して。「ここに千代さんが座っていたのよ」とボランティアの方々が、熱意を持っていろいろと教えてくださいました。その姿がとても素敵で、岩国にいらっしゃるみなさんが千代さんのように生き生きとされていたんです。また、千代さんは本当にたくさんの書籍を残されているので、エッセイや小説も読んで撮影に臨みました。

石橋さんは、宇野千代さんのどのような部分に魅力を感じていますか?また、石橋さんが演じるのは、宇野千代さんをモデルにした珠というキャラクターでもあります。宇野千代さんのどのような部分を大事にしながら、珠を作っていたのでしょうか。

千代さんは、知れば知るほど、語り尽くせない魅力に溢れている方だと思います。装いも洋装だったり和装だったり。様々な姿でいらっしゃるのですが、そのどれもがとても素敵で。まさに時代を超えた魅力があります。資料を読んだり、ゆかりの場所を訪ねたりしているうちに、まるでお友達ができたような気持ちになりました。自分の人生を自分で選び取ること、それがとても難しい時代に「これをしたい」ということを選び続けてきた方。そこに強く惹かれますし、尊敬しています。自由がなかったからこそ、自分の手で自由を獲得していった強さがあると思うんです。この作品を通して、そういうパワーや姿を伝えていきたいですし、観てくださる方にも「私ももう一歩前に進めるかもしれない」と感じてもらえたら嬉しいです。

『ブラッサム』というタイトルもとても印象的です。珠が自分自身を肯定し、奮い立たせる言葉という意味もあると伺いました。石橋さんご自身は、このタイトルや“自分を奮い立たせる言葉”について、どのように受け止めていますか?

千代さんは、数々のポジティブな言葉を残されている方です。でも、その言葉が生み出された瞬間を想像すると、実はとても孤独だったり、厳しい目を向けられていたりしたのではないかと思うんです。そういう時にこそ、明るさを持って生きること。それが強さなのだと感じます。私自身、この半年間撮影をしてきて、日々いろいろな感情を表現しなければいけないので、身体的にも精神的にも苦しい時がありました。本当に苦しい気持ちになる日もある。そんな時に思い出すのは千代さんが「ご気分はいかがですか?」と聞かれた際に「最高です」と答えたというお話です。骨折し入院されていた時にも、そうおっしゃっていたと伺いました。私も「最高です」と言ってみようと心がけているのですが、調子がいい時はすらっと出てきても、疲れていたり落ち込んでいたりする時はなかなか言えない。実際にやってみて、改めて千代さんはすごいなと感じました。どんな状況に置かれても、自分が選べば「最高です」という状態に持っていける。その強さに、今も支えられています。

撮影を通して、今の石橋さんが感じているやりがいや、大変だと思うこととは?

やはり圧倒的な撮影量です。次から次へといろいろなシーンを撮っていって、それが毎日続いていく。自分ではかけられないような負荷というか、ある種の緊張感でもあるので、最初は圧倒されてしまいましたが、それは“朝ドラ”という環境だからこそ学べること。この日々が一体どういう経験になっていくのか、今はまだ言葉にはしきれないでいますが、とにかく日々、自分がたくましくなっているのを感じています。それでも苦しいなと感じる時は、千代さんのエッセイを読みます。とても明るい気持ちになれるんですよね。千代さんご自身が一番楽しんで生きている感じがして「私ももっといける」、「もっと頑張れる」と勇気をもらえるんです。

この先のシーンで楽しみにしているところはどこでしょうか?

大正ロマンの時代に入っていくところです。着物のデザインもどんどん華やかになり、独特になっていく。その中で洋装が入ってきて、いろいろな価値観や美の基準が混ぜこぜになっていきます。衣装や建物も含めて、どんな世界が立ち上がっていくのか、本当にワクワクしています。

珠の父・清治(渡部篤郎)との関係についても聞かせてください。珠が自由を獲得していくうえで、清治は避けて通れない存在だったと思います。

千代さんは、お父様について、ドストエフスキーの小説に出てくる狂人のようだったと書かれているんです。本当に強烈なお父様だったのだと思います。珠から見たお父様も、怖く厳しい存在です。でも、そこにはお父様の孤独や、悲しそうな後ろ姿も見えていたのではないかと感じています。だからこそ珠は理解したいし、何を考えているのか教えてほしいという思いが強くある。脚本を読んでいても、お父様は本当に難しい役だと思いました。でも、渡部(篤郎)さんが演じられるお父様は、怖さだけでなくとても優しい目をされる瞬間があるんです。だからこそ珠がただ「怖いお父様」として拒絶するのではなく、もっと知りたいという気持ちになるのだなと思いました。

一方、継母・リョウ(国仲涼子)との関係は、父とはまた違う支えや強さがあるように感じました。特に、珠の背中を押す場面では、母としての強さが印象的に描かれています。

“お父様の言うことが絶対”という空気の中、お母様もその時代を生きている女性として、いろいろなものを抱えている人だと思うんです。でも、ある場面で珠の背中を押すお母様を見た時に、誰よりも強い人だと感じました。国仲さんが演じられるお母様は、珠への愛情の爆弾を持ってきたように感じるくらい、ものすごいパワーがあって。「あなたは私の娘だ。私はあなたをすべて肯定する」という、母の強さに圧倒されました。お芝居という感じがしないくらい素晴らしい瞬間でした。

“朝ドラ”のように、長い期間、ひとつの役と向き合い続けることは、なかなかないことだと思います。どのような経験になっていますか?

一人の人生の長い時間を演じられるという意味でも、こんな機会は他にないと思います。何といっても、日々の何気ない瞬間がきちんと描かれることが、すごく嬉しいんです。洗濯をしている時や、飲み物を飲んでいる瞬間、家へと続く道を歩き、家の中に入る。そういう本当にふとした瞬間に、私たちの感情は動いたりすると思うんです。そういう部分まで演じられることは、とても贅沢なことだなと感じています。

撮影が始まる前と、半年間演じてきた今とで、珠という人物への印象に変化はありましたか?

始まる前から、何か大きく印象が変わったということはありません。ただ、10代の女学生時代の珠は、厳しいお父様がいて、家の空気をみんながうかがっているような環境にいました。その中で、まだ珠は何者にもなっていない。どちらかというと自分を前に出せないタイプで、自分が何をしたいのかも分からないところから始まりました。そこから少しずつ「自分はこうしたい」、「こう生きたい」というものが、ゆっくりゆっくり立ち上がっていく。その過程を演じることが、とても楽しかったです。人が何者かになる瞬間に、自分が立ち会えている感覚がある。周りからのプレッシャーなどで一度崩れても、そこからまたさらに強くなっていく。何度も壊れて、また作っていく、その繰り返しがどんどん楽しくなっていきました。

何者かになっていく瞬間、壊れてまた作られていく過程にワクワクする感覚は、ご自身の人生とも重なる部分がありますか?

あります。私は、常にもっと変わりたいと思っています。もっと面白い表現がしたいし、もっと面白い人になりたい。そう思っていると、やっぱり壁にぶつかる瞬間があります。でも、それも成長している証なのだと思うんです。ブレイクスルーしたと思ったら、また次の壁が現れる。みんなきっとそうだと思うのですが、特に最近はそれがすごく楽しいというか。壁に当たっている瞬間も、「これは自分が次に成長する機会なんだ」と思えるんです。それもひとつの喜びなのかなと感じています。


俳優 石橋静河(SHIZUKA ISHIBASHI)
Instagram:
@shizuka_isbs


連続テレビ小説『ブラッサム』
出演:石橋静河、他
NHK総合にて、毎週月曜〜土曜、8:00~8:15放送中
※土曜は1週間の振り返り


staff
Photographer : KAITO FUJISAWA
Hair:KOICHI NISHIMURA(VOW-VOW)
Makeup:YUKO AIKA (W)
Stylist:MEGUMI YOSHIDA
Edit & Text : AYAKO UENO(AKANE MAGAZINE)

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