坂東龍汰「表現者として、その波に乗れている側の人でいたい」WEBインタビュー
坂東さんは、公開中のアニメーション映画『我々は宇宙人』で、翼の声を務められています。まずは率直に、完成したものをご覧になっていかがでしたか?
想像をはるかに超えてくる映画になっていました。先に観ていた友人や周りの方、マネージャーさんからも「すごくいい!」とは聞いていたのですが、実際に観たら、自分が関わっている作品だということを忘れるくらいで。一本の映画として、自分の琴線に触れるものに出会えた感覚がありました。言葉を選ばず言うと、“ぶん殴られた感じ”がしたんです。始まりのシーンで、雫がピューッと垂れてくる絵から鳥肌が立って。「こんなにリアリティが高いのか?」と思っていたら最後までその密度のままでした。暁太郎役の(岡山)天音くんとアフレコをしていた時は、まだ絵も完成していなかったんです。制作チームのみなさんが作業しているところへも一度見学に行かせていただいたのですが、確かに「この描き込み、この密度で最後まで作り上げるの⁉︎」と圧倒されていたんです。それでも、スクリーンで観ると全然違いました。これはすごいことになるぞ、と思ったのをハッキリと覚えています。脚本もセリフも素晴らしかったですし、門脇(康平)監督がピックアップしている出来事のひとつひとつが、本当に細かいんです。ノスタルジーな自分の記憶に針を刺してくるような感覚があって、当時の匂いや見ていた景色がどんどん蘇ってくる。映画の中の出来事と自分の記憶が重なっていくような経験を、観ている間ずっとしていました。そんなことは生きていて初めてだったので、本当に衝撃的でした。
アフレコには、どのようなことを思いながら臨まれたのでしょうか?
声を当てるうえでは、最初は不安もありました。今までの声の仕事とは、全然違うものが求められている気がしていて。アニメ的な声ではなく少しリアリズムが必要で、生の声に近いトーン。でもただ生っぽければいいわけでもない。この独特な空気感の中で、どうすれば自分の声が作品を邪魔せずに存在できるのかを考えていました。その時に、幼少期のパートを担当されている方々の声にかなり助けられたんです。僕が声を入れる前、幼少期のパートを少し見せていただいた時に「このトーンの世界観を監督は求めているんだな」と掴めた感覚がありました。簡単ではないけれど、ここを目指していけばいいんだなと。自分の中で漠然としていた声へのイメージが、そこで少し見えた気がします。

門脇監督とは、作品についてお話しする機会もありましたか?
監督、天音くんと一緒に、『カンヌ国際映画祭』の「監督週間」に行った時に初めてちゃんと話せたんです。その時にいろいろ聞きました。「みんなが共感できるようなエピソードや仕草、会話のセリフをどうやって思いつくんですか?」とか、もうそういうところから(笑)。初めてお会いした時は、正直「本当にこの方がこの映画を作ったの?」と思うくらい、不思議な印象があったんです。お話ししてみると、才能とアイデアに溢れた方なのだと感じました。何より、やり遂げる強い気持ちと継続力には執念を感じましたし、とても尊敬しています。僕は、少しだけ普通の子どもたちとは違う環境で育ってきたことから、作中に出てくるキャラクターやゲーム機などのみんなが知っているようなものにもあまり触れてこなかったですし、一般の学校にも行ったことがなかったので、他の人より「あるある」を体験していないタイプの人間だと思うんです。それでも、母親と子どもの関係や、子どもの頃に自分がどう感じながら周りの子と接していたかということなど、記憶にはあるけれど、大人になるとなかなか思い返すことのない感覚が、映画を観ているとすごく新鮮な感覚として戻ってくるんです。あの時リアルタイムに感じていたこと、自分が考えていたこと、突発的にやってしまったこと、人に嫌なことを言われて怒ったこと、逆に自分がして怒られたこと。そういうディテールが本当に細かいんですよね。それでいて押し付けられている感じがしない。気付いたら自分の中にその感覚が戻ってきているようで、魔法にかけられているんじゃないかと思うくらいでした。どこまでが監督自身の経験で、どこからが作品を作るにあたって膨らませていった部分なのか、細かくは分からないですが、制作の裏側について、カンヌでお酒を飲みながらみんなで話せたのはすごく楽しかったです。僕、もう次の監督の作品も気になってしまって(笑)。だって、『我々は宇宙人』という作品を作って、ここまで海外の人に衝撃を与えて……。(取材時)まだ公開前ですが、公開されたらとんでもないことになると思うんです。カンヌの夜に、天音くんがそういう話をグイグイ掘り下げてくれて(笑)、監督もすでにいろいろなことを考えられているようでした。僕はもう、「どんな役でもいいから、芋虫でもいいから声をやらせてほしいです」と切望しました(笑)。

(笑)門脇監督は坂東さんとも年齢が近いですよね。今回の出会いをどのように感じましたか?
この仕事を10年くらい続けてきて、このタイミングでそういう方々と出会えたことは本当に嬉しいですし、監督のような才能のある同世代の方々と、今後も仕事をしていきたいという思いは最近すごく強くなっています。僕が何も考えずにフラフラしていた時に、こんなにも試行錯誤を繰り返し、こんな名作を温めていた同世代がいたのか、という気持ちもありますね。監督だけじゃなく、誰にも見つけられていないけれど、ものすごいものを沸々と温めている人たちも、きっとたくさんいると思うんです。そういう人たちと組み、次の時代を作っていくじゃないですけど、そういうウェーブに乗っていたい。表現者として、その波に乗れている側の人でいたいという気持ちは常にあります。最近は同世代の監督やスタッフさんとご一緒させていただく機会が増えてきて、それはすごく嬉しいです。

公開後の広がりについては、今どのように想像されますか?
本当にすごいことになると思っています。今、周りの声を聞いていても間違いないだろうなと感じますし、普段映画を観ない人や、アニメーションに触れてこなかった人たちにどこまで届いていくのかも楽しみです。口コミでも僕らが宣伝活動をする中でも、いろいろな人の耳に届いて「じゃあ観てみようかな」と思ってもらえたら嬉しい。普段は5年に一本しか映画を観ないような人たちがこの映画に集った時に、作品はさらに力をつけていくと思うんです。いろいろな国で公開されたり、日本での上映回数が増えたり、ロングランしていったり。そういう広がり方をする作品になってほしいですし、届くべき人に届いた時の爆発力は本当にあると思っています。
日本のエンターテイメントの力を世界に知らしめる、素晴らしい作品のひとつだと感じました。
きっと広く届いていくはずですし、普段映画を観ないような方たちのところまで届いた時に、さらに大きな力を持つ作品になるんじゃないかと感じています。

俳優 坂東龍汰(RYOTA BANDO)
Instagram:@ryota_bando

『我々は宇宙人』
企画・監督・脚本:門脇康平
声の出演:坂東龍汰、岡山天音、山﨑 天(櫻坂46)、松井ケムリ、他
公開中
©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS
staff
Photographer : KAITO FUJISAWA
Hair & Makeup : YASUSHI GOTO
Stylist : YASUKA LEE
Edit & Text : AYAKO UENO(AKANE MAGAZINE)