今も昔も、月を見上げる秋の夜。お月見の起源と過ごし方 —中川政七商店とひもとく縁起物—

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今も昔も、月を見上げる秋の夜。お月見の起源と過ごし方 —中川政七商店とひもとく縁起物—

出典:国立国会図書館デジタルコレクション 渓斎英泉/十二ケ月の内 八月 月見 (十二ケ月の内)(一部加工)

月見団子にすすき、まんまるな月。日本の秋の風景として、思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。お月見は旧暦の8月15日に美しい月を眺めながら秋の収穫に感謝し、豊作を願う行事でした。
古くから美しく神秘的なものとして愛でられ、歌にも詠まれてきた月。その美しさをもう一度、見つめ直してみませんか。


日本のお月見の起源をたどると、「月を愛でる」という古くから行われてきた行為に、農耕行事が結びつき現在の形へと発展してきたことがわかります。

古くから愛でられてきた満月の美しさ
「お月見」という行為の起源について、はっきりとした記録は残っていないようです。しかし奈良時代に編纂された『万葉集』には、すでに月の美しさを詠んだ歌が収録されています。

雨晴れて 清く照りたる この月夜 またさらにして 雲なたなびき(大伴家持『万葉集』巻八・一五六九)
(雨が上がって清く照り輝いているこの夜の美しい満月よ、せっかく雲の晴れ間に見えたのだから棚引くことのないように。)

平安時代になると、中国から「中秋の名月」を眺めながら宴を催す風習が伝わり、貴族の間で取り入れられたといわれています。「中秋の名月」とは旧暦8月15日の夜の月を指します。秋は空気が乾燥して月が鮮やかに見えることから、一年のうちで最も美しい月とされてきました。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション 広重/瀬戸秋月 (金沢八景)

農民に広まったことで「収穫祭」の意味を帯びる
その風習が農民たちの間でそれぞれの地域の農耕行事と結びついたことで、実りへの感謝祭としての意味も帯びるようになりました。里芋や大豆、栗などの収穫物を月に供えた他、月の出具合によってその年の作物の豊凶を占うこともあったようです。また、「中秋の名月の夜は他人の畑から作物を盗んでよい」とか、「お月見の供物を子供たちが盗む」とする風習が各地にありました。盗まれた家では供物がなくなると「お月様が食べてくれた」と縁起のよいこととして捉えられていたそうです。

月とうさぎの物語
月の模様がうさぎの形に見えることから「月にはうさぎがいる」と古くからいわれ、さまざまな物語が語られてきました。月とうさぎの物語の中に、インドから日本に伝わったとされる次のような説話が『今昔物語集』にも記されています。

ある日、猿、狐、兎の3匹が、山の中で倒れている老人に出会いました。老人を助けようと、猿は木の実を集め、狐は川で魚を捕まえて差し出しましたが、兎だけは何も見つけることができませんでした。そこで兎は、どうにか老人を助けたいと考えた末に、火の中へ飛び込み、自らを食べ物として差し出したのです。その老人の正体は、仏教の守護神である「帝釈天(たいしゃくてん)」でした。兎の尊い行いに心を打たれた帝釈天は、その姿を後世に伝えるため、兎を月へ昇らせたといわれています。


中秋の名月は、月の満ち欠けを基準にした旧暦8月15日にあたります。2026年は9月25日です。

すすきや月見団子を飾る
お月見といえば、すすきと月見団子を飾るイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。すすきは茎の内部が空洞になっていることから「神様が宿る」とされ、豊作を祈って飾られます。現代ではお月見の定番となっている月見団子ですが、新米を使ってお餅を飾るようになったのは江戸時代後期のこと。もともと収穫した作物を供えていた風習と同じ意味合いを持っています。形状は地域によって異なります。

秋の味覚をお供えする
お月見は秋の収穫に感謝する行事でもあったことから、月見団子だけでなく、秋の味覚をお供えする風習も残っています。里芋などの芋類をはじめ、栗や柿、ぶどうなど、その時季に収穫されたものを供えます。特に芋類の収穫に感謝していた歴史から、中秋の名月は「芋名月」とも呼ばれており、今でも里芋をお供えすることが多いようです。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション 古代江戸繪集

月見酒もまた一興
お月見の宴では、貴族たちが月を眺めながらお酒を楽しみ、その風習はやがて農民たちにも広まっていったようです。月を愛でながら酒を酌む「月見酒」は古くから多くの人に親しまれ、秋の季語にもなっています。


今も昔も変わらず夜空に浮かび、人々に親しまれてきた月。いつもそこにある身近な存在だからこそ、お月見の日には静かに見上げ、その美しさをあらためて感じてみるのもよいものです。秋の夜に、お家でささやかにお月見を楽しむためのアイテムをご紹介します。

ささやかにお月見のムードを演出、小さなお月見飾り
玄関や棚の上に置きやすい、ちょこんとかわいらしいお月見団子飾り。お団子は「讃岐かがり手まり®」で仕上げています。まり芯には、白檀・丁子・龍脳などの天然香原料をしのばせ、ゆかしい香りを楽しめます。団子の後ろには、水引の産地である長野県飯田市の「大橋丹治株式会社」とともに作った、すすきに見立てた飾りも。小ぶりながらも、お月見らしい風景を室内にしつらえられる一品です。


中川政七商店
小さなお月見飾り 5,500円(税込)


愛らしいフォルムのうさぎの飾り
お月見の季節には、「うさぎ」の飾りもよく似合います。こちらは、瀬戸焼で作られたお月見うさぎの飾り物。つるんとした質感と、あたたかみのある丸いフォルムが愛らしい佇まい。見つめ合う親子の野うさぎをモチーフにしており、そっと飾るだけで、お月見のしつらえにやさしい物語を添えてくれます。


中川政七商店
瀬戸焼のお月見うさぎ飾り 3,850円(税込)


月見酒は、お気に入りの酒器で
月を眺める風流な時間のお供には、日本酒を。信楽焼の産地で400年以上にわたり焼き物作りを続ける窯元「明山窯」の片口酒器は、おわん型のかたちにより、日本酒の香りがふわりと引き立ちます。大地を思わせる、力強く美しい釉薬のグラデーションもポイント。月を愛でながら、ゆっくりと一献傾ける時間に寄り添ってくれる酒器です。


中川政七商店
明山窯 日と月 片口酒器【WEB限定】 2,970円(税込)


About 中川政七商店
716年(享保元年)創業の奈良の老舗。日本の工芸をベースに、全国約800の作り手と協業した生活雑貨を取り揃えています。暮らしの道具や季節のしつらい、染織を活かした服、 産地の風土に根差した食など、 日本の工芸とともに、心地好い暮らしを届けています。

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Edit & Text : NANA KIKUCHI(AKANE MAGAZINE)

参考文献
・田中宣一、宮田 登 編『三省堂 年中行事事典 改訂版』三省堂(‎2012年)
・岡田芳朗、松井吉昭『年中行事読本: 日本の四季を愉しむ歳時ごよみ』創元社(2013年)
・新谷尚紀『春夏秋冬の年中行事: 日本の暮らしと伝統』吉川弘文館(2025年)
大谷大学 | 月の兎 | 生活の中の仏教用語

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